■鉄筋コンクリート建物の耐用年数は約70年といわれています。これは適切なメンテナンスによって伸ばすことも可能ですが、無メンテナンス状態で放置すると劣化を早めてしまう事にもなります。
■コンクリートの劣化現象は、 1)中性化 2)ひび割れ 3)鉄筋の錆、膨張による爆裂が代表的なもので、これらの3つの現象が相互に関連しあいながら徐々に建物を劣化させていきます。
■そしてこれらの劣化現象を長い間放置することによって室内への漏水や外壁の欠落、人身事故へつながる恐れもありますので定期的な調査と適切な補修を行うことが最も重要です。
1 コンクリートの中性化
新しいコンクリートは高いアルカリ性を示していますが、長期間自然環境にさらされると空気中の炭酸ガスがコンクリートの細孔中に侵入し、アルカリ性が低下して徐々に中性化していきます。
コンクリートそのものは中性化したからといって強度が低下することはまったくありませんが、問題は内部鉄筋が錆びて膨張してしまう事です。この鉄筋の膨張が様々な劣化現象へと発展していきます。
1. 空気中の炭酸ガス 2. 酸性雨、工場などの煤煙、排気ガス 3. 外壁のひび割れ
2 ひび割れ
コンクリートは圧縮に対する強度は優れていますが、引長強度や伸びの強度は低い為、経年の外力の作用によってひび割れがどうしても発生してしまいます。
コンクリートの建物は構造学上の曲げ応力の計算の際にはコンクリートの引張応力は無視するのが一般的で引っ張り側のコンクリートに理論上、ひび割れが必然的に生じてしまいます。
ひび割れはその幅の大きさや、発生した部位、今後拡大するのか、拡大しないのかなどによって補修方法が違いますので、それらを的確に判別して建物全体の形態も考慮して補修計画を検討することが大切です。
1. 新設時コンクリート打設の施工不良 2. 地震、風、不動沈下など自然現象による外力 3. 乾燥、湿潤のくり返し
4. コンクリートの中性化
①Uカット、シーリングによるひび割れ補修工程(幅3mm以上、挙動性のある場合)
1.工具を用いてUカット
2.Uカット中
3.プライマー塗布
4.ノンブリードウレタンシーリング材の充填
5.シーリング材充填完了
6.樹脂モルタル充填
7.樹脂モルタル充填完了
8.微弾性フィラー塗装(下塗り材)
9.水性ウレタン塗装(上塗り材)
10.施工完了
②自動式エポキシ樹脂低圧注入工法によるひび割れ補修工程(幅3mm以上、挙動性のない場合)
1.施工前
2.ワイヤーブラシによる清掃
3.ひび割れに沿って台座の固定
4.シーリング材によるひび割れ部の封印
5.エポキン樹脂シリンダーの設置
6.低圧注入 24時間養生
7.シリンダー撤去、清掃 完了
3 鉄筋の錆による爆裂
躯体中の鉄筋がコンクリートのひび割れ、中性化などが原因で腐食、錆びてくると錆び部分の鉄の体積は約2倍~2.5倍に膨張します。この膨張圧が周りのコンクリートのひび割れを更に誘発させながら外壁を外に押し出し、欠落させてしまう現象です。
1. コンクリートの中性化 2. 鉄筋に対するコンクリートのかぶり不足 3. ひび割れ
爆裂部分補修工程
施工例①
1.鉄筋膨張による外壁の押し出し
2.ハンマーによる脆弱部撤去
3.露出鉄筋錆び落とし後、錆び止め塗布
4.樹脂モルタル補修 完了
施工例②
1.施工前
2.脆弱部撤去
3.錆び落とし後、錆び止め塗布
4.樹脂モルタル左官補修
5.外壁塗装
6.施工完了
施工例③
1.施工前
2.電動工具による錆び落とし
3.錆び止め材塗布
4.樹脂モルタル充填
5.樹脂モルタル充填完了
6.微弾性フィラー塗布
7.水性ウレタン塗装 施工完了